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札幌高等裁判所 昭和43年(行コ)5号 判決

控訴人

雪印乳業株式会社

右代表者

瀬尾俊三

右訴訟代理人

二宮喜治

被控訴人

釧路市長

山口哲夫

右訴訟代理人

坂本泰良

ほか十名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴審での訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「一、原判決を取り消す。二、控訴人の条例公布処分取消しの訴えに関する部分を釧路地方裁判所に差し戻す。三、被控訴人が、昭和四〇年一二月二〇日控訴人のなした釧路市工場誘致条例第三条の規定による奨励金交付申請に対し、昭和四一年二月一七日付で行なつた却下処分を取り消す。四、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上及び法律上の陳述は、左記のほかは、原判決の事実摘示(ただし、原判決五枚目裏八行目に「新設」とあるのを「増設」と改め、八枚目表初行から六行目までを除く。)と同一であるから、これを引用する。

控訴代理人は次のとおり述べた。

一  控訴人は、原審において、控訴人が昭和四〇年九月になした本件工場の設置は釧路市工場誘致条例(以下においては、昭和四〇年一二月二八日付の条例第二七号釧路市工場誘致条例の一部を改正する条例を「改正条例」と、同条例による一部改正前の工場誘致条例を一括して「旧条例」という。)にいう工場新設に該当する、または、これが増設であるとしても、控訴人は、昭和四〇年九月二九日旧条例所定の客観的基準に適合する右工場増設工事を完了したことにより当然に釧路市に対して奨励金交付請求権を取得した、との前提にたつて本件奨励金交付申請却下処分の違法事由を主張したが、当審においては、本件工場が旧条例にいう新設に該当するとの主張を全部撤回し、新たに次のとおり右却下処分の違法事由を追加主張する。

二  仮りに、控訴人は、被控訴人市長の奨励金交付決定によつてはじめて奨励金交付請求権を取得するものとしても、本件却下処分は次の諸点において違法であり、瑕疵ある行政処分として取り消されるべきである。

(一)  奨励金の交付を受け得べき期待的地位の侵害

(1)  釧路市においては昭和二九年九月二二日工場誘致条例が公布施行されて以来昭和三九年度までの一〇年間に旧条例にもとづき奨励金を交付した件数は七〇件に及んだが、同条例所定の基準に適合する限り、交付申請が拒否された事例は一件もなかつた。現に、控訴人は右期間中に二回の工場増設を行い、昭和三〇年の増設については昭和三一年度に二〇万六〇〇〇円、昭和三六年の増設については昭和三七年度に八四万一〇〇〇円の各奨励金の交付を受けている。

(2)  旧条例は、新増工場に対する奨励金交付の規定が大部分を占め、第三条は奨励金交付又は工場の新増設に対する協力という助成方法を、第四条は奨励金交付の要件を、第五条は奨励金交付額の算出方式、交付額の割合、期間を、第六条は交付期間の特例を、第七条は助成申請の形式を各規定し、その内容は具体的かつ詳細であつて、奨励金交付の確実性を保障するものである。

(3)  控訴人は、以上のような旧条例の規定及び従来の奨励金交付の実績に鑑み、釧路市に本件増設工事を行うことを決定したのであつて、本件増設工事の完成によつて釧路市から奨励金の交付を受け得ると期待する法的地位を取得したものであり、被控訴人市長のなした奨励金交付申請却下処分は控訴人の右期待権ないし期待的地位を侵害した違法がある。

(二)  旧条例にもとづく奨励金交付申請権の侵害

(1)  旧条例第三条は「本市は、工場の新設又は増設があつた場合、この条例の定めるところにより次の方法で助成を行うことができる。」と規定し、第七条は「奨励金の交付を受けようとする者は、事業開始の日から三月以内に……別に定める申請書を市長に提出しなければならない。」と規定し、同規則第四条は、「市長は申請書を受理したときは審査し、適当と認めたときはその工場に対する助成の限度その他必要な条件を付して助成するものとする。」と規定している。右各規定によれば、増設工事を完成し操業を開始した者が所定の助成申請書を堤出し、被控訴人市長においてこれを受理したときは、市長は旧条例の各規定に従つて申請を審査したうえ助成(奨励金交付の決定)をなすべき義務を負うものであり、これを申請人の立場からいえば、申請人は右条例の各規定によつて実質的審査を受ける権利を有するものというべきである。

(2)  控訴人は、本件増設工事完成後の昭和四〇年一二月二〇日奨励金の交付を受けるため被控訴人市長に対し工場設置助成申請書を提出し、右は同日受理されたのであるから、申請受理当時施行されていた旧条例によつて審査を受けるべき権利を取得し、被控訴人市長は、右条例により審査をなすべきことを義務付けられたものである。しかるに、被控訴人市長は、控訴人の申請について、受理の時点において施行されていた旧条例により審査決定することなく、その後に公布施行された改正条例により増設工事に対する奨励金の交付が廃止されたことを理由として、右交付申請を却下したのであつて、右処分は適用すべき条例を誤り控訴人の有する奨励金交付申請権を侵害する違法のものである。

(三)  本件却下処分に上述の条例の適用を誤つた違法がないとしても、改正条例を適用して控訴人の申請を却下したことは次の理由により違法である。

(1)  刑罰法規に遡及効を与えることは憲法第三九条に違反する無効な立法であるが、非刑罰法規においても法律を改正して既得権を制限し、またはこれを奪う立法をなした場合、当該新法は前記憲法の規定に違反する無効な法律というべきである。そもそも、本件工場誘致条例は、釧路市が奨励金の交付その他の助成を行うことをもつて工場を誘致し、同市の産業振興に寄与することを目的として制定されたものである。この条例にもとづき工場の誘致に応じたものが工場の新設あるいは増設にとりかかり、当該工場が完成されたことはこの条例の目的の達成にほかならないのである。したがつて、誘致に応じる側は、工場が新、増設されたときは、その後になつて誘致の根拠たる誘致条例が改廃されることなどは全く予想し得ないことである。

控訴人が、旧条例施行時において、同条例にもとづく増設奨励金の交付を受け得ることを期待する法的地位等を有したことは前記のとおりであつて、被控訴人の主張するように、改正条例によれば控訴人の増設に対する奨励金の交付はできなくなったものとすれば、改正条例は前記控訴人の有する既得の権利ないし法的地位を侵害する違法の立法であるといわなければならない。

(2)  さらに、控訴人が釧路市に工場を増設した経緯は既述のとおりであり、また、昭和四〇年三月開催の第三回釧路市定例議会においても、山本市長は、工場誘致条例を廃止すべきであるとの議員の発言に対し、「現在の条例があるためにこれを期待して計算の中に入れて既に増設に着工している会社も相当あるということであります。或は出来上つたものもあるという事実でございます。といたしますと、そのために経過規定を設けて行かなければならないと考えた。」旨の答弁をしているのである。

右の経緯によれば、控訴人が本件増設について釧路市から旧条例にもとづく奨励金の交付を受け得るものと信ずるのは当然であつて、このような関係を全く無視し、増設に対する奨励金の交付を廃止した改正条例は著しく信義に反する違法の立法というのほかない。

(3)  以上いずれの点よりするも改正条例は無効ないし違法のものであるから、かかる条例を根拠として控訴人の申請を却下した処分もまた違法である。

(四)  法の下の平等違反

改正条例附則第三項は、昭和三九年に事業を開始し、昭和四〇年度に固定資産税の賦課納入が行なわれ、同年度に交付申請がなされたもの(旭川自動車株式会社のほか二社)に対する経過措置を設けているが、昭和四〇年度に事業を開始し、同年度に交付申請がなされ、昭和四一年度に固定資産税を賦課徴収されるべきもの(控訴人はこれにあたる)については経過規定が設けられていない。しかしながら、固定資産税は、時の経過に伴つて当然に賦課納入されることが予定されているものであつて、この点において前者と後者を区別すべき合理的根拠は存しないから、右附則の規定は法の下の平等の原則に反する立法であり、被控訴人市長が地方自治法にもとづく再議権の行使を怠つて改正条例を公布したうえ、同条例を適用して控訴人の奨励金交付申請を却下したことは違法な処分というべきである。

被控訴代理人は次のとおり述べた。

一  期待的地位侵害の主張について

控訴人主張の奨励金の交付を受け得るという期待的地位は法的保護に価する権利性を有するものではない。すなわち、

(一)  右地位を期待権というためには、それが権利の形成過程にあり権利発生に必要な要件の欠缺が将来必ず補充される状態になければならないが、本件においては、奨励金交付請求権の発生要件である被控訴人市長の交付決定はなく、将来交付決定がなされる期待状態にあるものでもない。

(二)  本件奨励金制度は、釧路市の産業振興という政策的配慮から工場を建設した企業に恩恵的に交付されるものであつて、当該企業は一方的に利益を享受するものであるから、たとえ工場を建設した企業が本件奨励金の交付を受け得なくなつたとしても、これによつて特別の犠牲を負担することにはならないし、元来企業がある場所に工場を新、増設するか否かは、当該企業の損益計算を最大の基準として決定されるべき事柄であって、本件奨励金の交付を重要かつ決定的な動機として工場を建設する企業はない筈である。

(三)  旧条例による奨励金制度は、その制定当初から問題があり、経済事情の変更等によつて改正されるべく条件づけられて誕生し、昭和三四年頃から釧路市議会等で廃止の意見が次第に強くなつており、一般に改廃の可能性を十分予測し得たところである。しかも、実際にも、釧路市の財政事情の悪化に伴い企業側に不利な改正が行なわれ、殊に昭和三五年の改正においては、本件改正条例のような経過救済規定すら設けられていないのである。

(四)  したがつて、控訴人が本件奨励金の交付を期待して本件工場増設を行つたとしても、この控訴人の立場ないし地位は、侵害することのさ許れないほどの権利性を有するものではなく、法的保護の対象にならないものである。

二  奨励金交付申請権侵害の主張について

本件改正条例は、その附則第二項、第三項で旧条例の効力の及ぶ範囲に関し、既に奨励金の交付決定を受けたものおよび旧条例の規定により昭和四〇年度を初年度として奨励金交付の対象となるものについてはなお従前の例による旨経過規定を置いており、新、旧条例の適用対象は明確にされているのであって、控訴人の本件申請につき旧条例によつて審査すべき理由はない。

三  信義則違反の主張について

(一)  旧条例にもとづく奨励金制度は、いわゆる給付行政の性質を有する補助金の一種であるが、その内容は、釧路市の産業振興を図るため同市における大企業の工場の新、増設に対し優遇措置を講ずるものであつて、公共的あるいは社会保障的見地から交付されるわけではなく、元来そのときどきの社会、経済、政治の情勢の変動に応じて最も将来の改廃が予想される類の不安定なものである。しかも、本件奨励金制度は、実質的には固定資産税の一部減免にほかならず、脱法的に不均一課税を行うものとして従前からその不当性が指摘され、政府も既に昭和二六年頃から再三にわたり是正を指導してきたものであつた。

(二)  釧路市は旧条例にもとづき昭和三〇年度から昭和四二年度までの間に総額七億六、六〇五万四〇〇〇円に上る奨励金を交付し、就中昭和三五年度以降は、毎年一億円前後の奨励金が支払われ、これがため乏しい同市の財政を圧迫し、道路、下水、住宅等の拡大充実など住民の要望の強い福祉行政遂行上の一大阻害要因となっている実状である。

(三)  他方企業の立場になつて考えても、工場立地の重要な条件は、安い工業用地が広く得られること、労働力が確保し易いこと、電力が安く豊富に得られること、工業用水が豊富であること、原材料が入手し易いこと、原材料や製品の運送に便利な港湾施設があることなどであつて、奨励金の制度は問題にならないことである。

(四)  以上のとおり、控訴人は、もともと釧路市とその住民一般の負担において不合理な利益を得ていたに過ぎないのであり、控訴人が奨励金の交付を受け得る期待的地位が上記のとおり権利性の薄弱なものであることをも考慮すると、工場増設に対する奨励金制度が廃止されたからといつて、改正条例そのものまたはこれを公布した被控訴人市長の信義則違反を主張し得ないものである。

証拠として、〈略〉。

理由

第一本件改正条例の公布処分の取消しを求める訴えについて

控訴人のこの訴えが、改正条例とは別個に同条例の公布行為そのものを独立の行政処分と把握し、当該公布行為のみの取消しを求める趣旨であるとすれば、このような訴えは不適法なものといわざるを得ない。その理由は、原判決理由第一の一(原判決一三枚目表末行から一四枚目表七行目まで)と同一であるから、ここにこれを引用する。

控訴人の右訴えが、条例はそれが適法に公布されて始めて住民に対して効力を発動することになるという意味において、公布処分を条例の制定行為として把えた上で、改正条例そのものの効力を争う目的で同条例の制定行為としての公布処分の取消しを求める趣旨であると解するにしても、本件口頭弁論の経過に照らすと、控訴人は、本訴訟において、被控訴人市長が改正条例を適用してなした奨励金交付申請却下処分の取消しを併せて訴求し、当審において、右却下処分の違法事由として、新たに改正条例そのものの違法、無効をも主張し、改正条例の違法、無効を理由に右却下処分の取消しを求めていることが明らかである。そうすると、控訴人としては、右却下処分の取消しを求めることがその権利ないし利益の救済のために最も直截な方法であり、現に右却下処分の違法事由として改正条例の違法、無効を主張している以上、控訴人の目的はそれによつて直接に達成し得るのであるから、それ以外に改正条例の制定行為としての公布処分の取消しを求める訴えの利益はないものといわなければならない。

したがつて、本件改正条例の公布処分の取済しを求める訴えは、いずれにしても不適当なものであつて却下を免れない。

第三本件奨励金交付申請に対する却下処分の取消しを求める訴えについて

一被控訴人は、本件条例にもとづく奨励金交付申請に対し交付の決定をするか、あるいはその申請を却下するかは市長の自由裁量事項に属することであるから、右訴えは不適法であると主張するので、まず訴えの適否について判断する。

控訴人が昭和四〇年一二月二〇日被控訴人市長に対し、旧条例第七条第一項に従い奨励金交付の助成申請書を提出して同日受理されたところ、被控訴人市長は、同年一二月二八日公布施行された改正条例によって昭和四〇年度内に既に増設工事を完成したものを含め、将来あらゆる増設工事に対する奨励金の交付が廃止されたから、控訴人の増設分についても奨励金交付の対象とはならないとの理由で、昭和四一年二月一七日控訴人の右申請を却下したことは当事者間に争いがない。

当裁判所は、右却下処分の取消しを求める訴えが適法であると判断するものであつて、その理由は、左記のとおり附加するほかは、原判決の理由第二の一の(二)(原判決一八目裏七行目から十九枚目表九行目まで)と同一であるから、ここにこれを引用する。

旧条例および改正条例(条例および同施行規則の内容が末尾添付別紙(一)、(二)のとおりであることは、〈証拠〉により明らかである。)に定める奨励金の制度は、同条例の各規定に照らすと、釧路市の産業の振興という公的目的を達成するため、同市に工場を新設又は増設した企業に対する助成の措置として、当該企業の申請により、一定の基準で算出した額の金員を、返還義務を負担させることも、相当の反対給付を受けることもなく、同市の一般財源から交付するものであるが、このような奨励金の制度は、行政主体が、公的行政目的を達成するため、行政客体に対し、それが一定の行為を遂行することを奨励ないし促進するために与える現金的給付であつて、行政客体の側における返還義務を伴わないいわゆる補助金の性質を有するものであることは明らかである。ところで、行政主体が行政客体に対して補助金を交付する関係は、行政権がその優越的な地位にもとづき公権力を発動して行政客体の権利、自由に干渉し、これを侵害する作用ではなく、行政目的を達成するため行政客体に資金の交付という便益を与える非権力的な作用にほかならず、本来私法的行為形式を用いて私法的に法律関係を形成することが可能であつて、その場合補助金交付の法律関係は贈与契約として構成されるであろう。しかしながら、一般に国民(地方自治体の場合は地域住民)の意思に沿つた行政を担保する必要に加えて、行政主体が大量に発生する右補助金交付の法律関係を明確ならしめ、行政客体の平等取扱を図り、右法律関係を全体として統一を保つて処理して行く合目的的な技術として、行政の法的行為形式(行政行為)を用いて右法律関係を構成することも立法政策としてもとより採り得るところというべきである。

本件旧条例は、第三条で助成方法の種類を、第四条で奨励金交付の対象を、第五条で交付額の算定基準および交付期間をそれぞれ規定し、第七条および同施行規則第三条において奨励金交付の申入れの形式を市長に対する所定の要式による「申請」と定め、同規則第四条において、市長は右申請を審査し、適当と認めたときは必要な条件を附して助成するものと規定し、奨励金交付の方法で助成する場合の交付行為の形式については、旧条例および改正条例はいずれもその附則第二項において「決定」と規定し、さらに旧条例第八条は、同条例所定の奨励金交付の要件に違反がある場合などにおける奨励金の返還命令につき、第九条は市長の助成対象者に対する調査権限および助成対象者の報告義務につきそれぞれ規定している。しかも、〈証拠〉を総合すると、釧路市においては、従来奨励金を交付する場合には、市長が同市指令として奨励金交付の決定をしたうえ、これを申請者に通知する方法をとり、奨励金交付申請を却下する場合には、却下通知書に行政不服審査法第六条による異議の申立ができる旨を教示する取扱をしていることが認められる。

これらの条例、施行規則の各規定および釧路市の行政実務を総合して考えると、旧条例は、奨励金交付の法律関係を、企業(相手方)の申請を前提としつつも、上記の形式的、法技術的な意味での公法的行為形式(奨励金交付決定または奨励金交付申請却下決定という行政処分)を用いて処理する建前をとつているものと解するのが相当である。そして、このように、実質においては贈与の性質をもつ債権債務関係を成立せしめるに過ぎないものであり、公権力の発動の実体を伴わない形式的行政処分であつても、条例による規制に服し、条例の規定によつて法的統制の実効性が保障されているものである以上、これを抗告訴訟の対象から排除すべきではなく、行政事件訴訟法第三条の「処分」に包含されれると解するのが相当であるから、奨励金交付申請却下の決定に対しては、右申請に対する拒否処分として抗告訴訟をもつてその当否を争うことができるものというべきである。

二進んで本案について判断する。

(一)  控訴人は、奨励金交付請求権は、工場の増設という事実行為の完了により当然に発生するものであつて、昭和四〇年九月二九日本件工場の増設を完了すると同時に工場増設による奨励金交付請求権を取得したのであるから、改正条例附則第三項により旧条例を適用すべきであり、しかも被控訴人市長は、奨励金を交付するか否かの裁量権を有するわけではないから、控訴人の本件奨励金交付申請に対し、当然に交付決定をすべきであるにもかかわらず、これを却下したのは奨励金交付請求権の性質および改正条例附則第三項の解釈を誤つた違法な処分である、と主張する。

しかしながら、当裁判所は、工場の増設という事実行為の完了のみで当然に奨励金交付請求権が発生するものとは解せられず、控訴人が昭和四〇年九月二九日に完成した増設工事について改正条例附則第三項が適用される余地はないと判断するものであつて、その理由は、左記に附加するほかは原判決の理由第二の二の(二)および第一の二(原判決理由二一枚目表四行目から同裏八行目「明白である。」までおよび一五枚目表二行目「釧路市工場誘致条例は、」から一六枚目表六行目「解される」まで)と同一であるから、ここにこれを引用する。

釧路市が旧条例を制定したことをもつて、工場を新設または増設した者に対し奨励金を与えることを法律上の義務として負担するという効果意思を伴う表示行為(懸賞広告による申込の意思表示)があつたものとみることはできず、奨励金交付の法律関係が懸賞広告類似のものであるとの控訴人の法律上の見解は首肯し難いものである。

そうすると、控訴人の本主張は失当で採用の限りでない。

(二)  控訴人は、旧条例の定める奨励金の交付請求権が市長の交付決定によりはじめて発生するものであるとしても、控訴人は、旧条例により奨励金の交付を受け得ると期待する法的地位を取得したのであるから、被控訴人が改正条例を適用してなした本件却下処分は、右控訴人の既得の法的利益を侵害する違法な処分である、と主張するので判断する。

控訴人が当審で主張する二の(二)の(1)の事実は当事者間に争いがなく、旧条例の規定の内容が控訴人主張のとおりであることも既にみたとおりである。しかしながら、〈証拠〉を総合すると、次の各事実を認めることができる。

(1) 旧条例は、その原案では、工場誘致の趣旨から新設工場のみを対象としたものであつたが、地元企業との均衡から工場の増設をも対象とするに至つたもので、昭和二九年に制定された当初から、同条例を審議した釧路市議会(経済常任委員会および総務常任委員会)において、経済情勢の推移に応じその内容を時宜に適するよう変更することを条件とする旨の附帯決議がなされていること、

(2) その後旧条例は、釧路市の財政事情の悪化を主たる理由として数回に亘つて改正が行なわれたが、昭和三五年三月三〇日に公布施行された改正条例では、従前奨励金交付の対象を投資額一、〇〇〇万円以上または常時使用する人員が五〇人以上の工場の新設および投資額五〇〇万円以上の工場の増設と定めていたものを、新、増設を問わず投資額三、〇〇〇万円以上のものに制限するとともに、従前奨励金の額の算定基準を、新、増設を通じて、初年度固定資産税額の一〇〇分の一〇〇、次年度一〇〇分の七五、その後の年度一〇〇分の五〇の範囲内と規定していたものを、増設については、新設の場合の割合に一〇〇分の七〇を乗じて得た額と減額し、交付期間についても、投資額一〇億円以上の新設に対する奨励金に五年以内の分割交付の特例を設け、この改正条例は、その施行前に奨励金交付決定を受けたものおよび昭和三四年度において奨励金の交付対象となるもののうち投資額三、〇〇〇万円未滞のものについては従前の例によるが、その他の昭和三四年度において交付する奨励金から遡及して適用するものとされており、昭和三九年七月四日に公布施行された改正条例では、奨励金交付の対象を、従前は投資額三、〇〇〇万円以上と定めていたものを投資額五、〇〇〇万円以上のものに制限し、この改正条例は同年一月に遡つて適用するものと定められており、さらに昭和四〇年三月二五日公布施行の改正条例では、投資額一〇億円以上の新設に対する奨励金交付期間の特例を、従前は五年以内の分割であったのを七年以内の分割と延長していること、

(3) 旧条例に定める奨励金の制度は、専ら固定資産税額を基準とし、その一定割合の金額を交付するものであつて、実質的には固定資産税の一部減免と異ならないものであるが、政府は、かねてから、地方自治体が工場誘致のために地方税の減免措置を行うことが地方自治体の財政上支障をきたすことを理由に、かかる取扱に否定的もしくは消極的な態度を示し、昭和三〇年一〇月一八日には自治庁税務部長の通達をもつてその旨を指導方針として明らかにしており、釧路市においても、特に工場増設に対する奨励金制度の不合理性が指摘され、昭和四〇年二月二七日開会の定例議会においては旧条例による奨励金制度の廃止が論議せられていること、

以上の諸事実が認められるのであつて、他に右認定を覆し得る証拠はない。

旧条例に定める工場増設に対する奨励金制度は、既述のとおリ、釧路市の産業を振興して住民の利益を増進するという公益上の必要にもとづき、その源資は税金を主体とする同市の一般財源から支出されるのであるから、もともと同市の財政状態や政治的、社会的情勢の変動に応じて将来の改廃が予測される性質のもので、永久・不変の制度として存在するわけのものではなく、現に前記認定の旧条例制定当初の経緯及びその後の数回に亘る改正の経過などはこれを裏付けるものといわなければならない。そればかりでなく、右奨励金制度は、釧路市内に工場を増設した企業に対して何らの反対給付を受けることなく一方的に交付せられるものであり、企業は、工場を増設するために資金を投下するであろうが、それは営利事業に従事し、自由に経済活動を営むべき当該企業の経営上の理由とその必要にもとづくものにほかならないのであつて(このことは従前から存在する工場の実績に対する評価にもとづき行なわれる増設の場合特にいい得るところである。)、奨励金の交付と対価的関係に立つ出捐ないし負担ということはできない。したがつて、旧条例による工場増設に対する奨励金は、多分に恩恵的な性質を有する給付であつて、工場を増設した企業に対し提供される特別の利益に過ぎず、釧路市としては、その政策的考慮にもとづき右奨励金制度そのものを廃止すると否との自由を有するものと解するのが相当である。

そうだとすると、控訴人が旧条例による奨励金制度の存往を一つの動機として本件工場増設工事を行つた事実は、本件口頭弁論の全趣旨に照らしてこれを認め得るところであり、控訴が旧条例のもとで右工事を完成して奨励金交付申請をし、これが受理されたことも上記のとおりであるが、これによつて控訴人が、その主張のような従前における諸関係からみて、当然に奨励金の交付を受けられるであろうと期待したとしても、右のような期待は、旧条例による奨励金制度が維持、存続せられる限りにおいての事実上の期待に止まり、釧路市に対し、旧条例の増設に対する奨励金制度そのものの改廃によつて右期待を侵害してはならないという法律的拘束を設定するまでの権利性を有するものとはいい難く、右期待は未だ具体的権利発生に先だち法的保護の対象となり得る地位にはあたらないと認めるのを相当とする。よつて、控訴人の本主張は理由がなく採用することができない。

(三)  控訴人は、本件却下処分は控訴人の旧条例にもとづく奨励金交付申請権を侵害する違法な行政処分である、と主張するので判断する。

本件却下処分が手続的申請要件の欠缺を理由とするものではなく、改正条例により工場増設に対する奨励金制度が廃止されたことにもとづき、実体要件の欠缺を理由としてなされた実体的な拒否処分であること、および本件却下処分が抗告訴訟の対象となる処分性を有すると解すべきものであることは上記のとおりである。

控訴人の主張するところによれば、控訴人は、旧条例の施行当時においてその規定に適合する工場の増設を完了し、被控訴人に対し助成の申請をなし、それが受理されたのであるから、被控訴人は右受理時における旧条例にもとづいて右申請につきその適否を審査決定すべきであるにかかわらず、これをなさず、その後に公布施行された改正条例により右申請を却下したのは、上記控訴人の旧条例により審査決定を求め得る申請権を侵害したものであるというのである。

しかしながら、控訴人が、実体的に奨励金の交付を受くべき法的保護に値する期待的地位を有していないことは既にみたとおりであり、手続的にも、行政処分は処分時に有効に存在する法令に準拠してなされるべきが原則であつて、控訴人は、交付申請書が釧路市長に受理されたことによつて、当然に受理当時の旧条例に準拠して申請が処理されるべき権利ないし法的地位を取得するものでなく、受理後に受理当時の条例を改正する条例が公布施行された場合は、右改正以前に不相当に長期間申請の審査、応答を怠つたまま放置するなど特段の事情がない限り、処分時に適用可能な改正条例に準拠して申請を処理することは何ら違法ではないと解するのが相当である。

そこで、本件において右の特段の事情の有無について検討する。

昭和四〇年九月二九日に完成した増設工場に対する固定資産税の第一回賦課期日が昭和四一年一月一日であることは上記のとおりであり、〈証拠〉を総合すると、釧路市における従来の奨励金交付の手続によると、右のように昭和四一年一月一日現在の状態で固定資産の価格(課税標準)が確定し、これにもとづいて固定資産税の賦課額が決定されるものについて、その後事務当局(経済部商工課)において、増設工場のうち直接生産に関係のない部分の有無など申請の内容を調査したうえ、工場誘致審議会に諮問し、審議会の答申を待って市長が交付の可否を決定し、申請者に対し初年度分の交付額を具体的に明記した交付決定を釧路市指令として通知するものであつて、申請者が右通知を受けるのは、どんなに早くとも同年四、五月以降であることが認められ、右認定を左右し得る証拠はない。

右認定の事実によると、被控訴人市長は、改正条例の公布施行された昭和四〇年一二年二八日の段階においては、控訴人の奨励金交付申請の処理を不相当に長期間放置していたものということはできず、他に上記特段の事情を肯認し得る証拠はなく、甲第一一号証の一は上記法律判断を左右する資料となり得るものではない。

よつて、控訴人の本主張は理由がなくこれを採用することができない。

(四)  控訴人は、控訴人のなした工場増設について改正条例の施行により奨励金の交付が受けられなくなつたものとすれば、右改正条例は控訴人の既得の権利ないし利益を侵害し、信義に反する違法、無効の立法であるから、これに準拠した本件却下処分も違法であると主張する。

〈証拠〉によると、昭和四〇年二月二七日開会、同年三月二三日閉会の釧路市定例議会において、当時の市長山本武雄が、旧条例による奨励金制度を廃止すべきであるとの議員の質問に対し「現在の条例があるためにこれを期待して計算の中に入れて既に増設に着工している会社が相当あり、出来上つたものもあるということである。そうすると、そのための経過規定を設けて行かなければならないと考える。」旨の答弁をした事実が認められ、右認定を左右すべき証拠はない。しかしながら、改正条例の制定当時控訴人が奨励金交付請求権もしくは奨励金の交付を受け得ることを期待する法的地位を有していなかつたことは既にみたとおりであるから、右改正条例が控訴人の既得の権利ないし法的地位を侵害するものでないことは多く論ずるまでもなく明らかである。

しかして改正条例は、将来における工場増設に対する奨励金の制度を廃止し、かつ前段判示のような経過規定を置き、すでに交付決定を受けた既得の権利はもちろん未だ交付決定がなくとも昭和三九年一月一日以降に工場の増設を完了し、昭和四〇年度において固定資産税が賦課され、同年度を初年度として奨励金交付の対象とされる者についてもその手当をしているのであるから、改正条例には違法の点はなにもないものといわなければならない。

また、〈証拠〉を総台すると、釧路市が工場増設に対する奨励金の制度を廃止するに至つた要因として、次の各事実が認められる。

(1) 改正条例制定当時の釧路市の財政事情は、昭和三八年度における歳入決算総額二八億二八億三、五四四万九〇〇〇円中土地売払代金(一億三、六五三万六〇〇〇円)の占める割合は、4.7パーセントで、その大部分の一億二、五五一万五〇〇〇円が経常一般財源に充当され、昭和三九年度には同様土地売払代金(三億二、〇二〇万一〇〇〇円)の占める割合は9.1パーセントでその約半分の一億五、〇三七万五〇〇〇円が一般財源に充当されるという状況で、相当窮迫した事態にあつたこと、

(2) 釧路市は、改正条例の制定当時、従前の新、増設工増に対する奨励金として既に交付決定をなした確定債務の未払分がなお約三億一、八七四万円残存しており、さらに控訴人の本件増設工事および訴外本州製紙株式会社、十条製紙株式会社の新規の増設工事などについて旧条例による奨励金を交付するとすれば、少くとも概算合計一億五、六〇〇万円(仮りに交付期間を旧条例第六条の規定により七年間に分割するとしても年間平均二、二三四万円)の新たな支出が見込まれ、釧路市の財政の規模、状態に照らして将来の財政負担を一層過重ならしめる結果になることが懸念されたこと、

(3) 釧路市においては、昭和三九年現在で道路の舗装率が僅か4.7パーセントに過ぎず、北海追内の主要都市の中でも非常に低率であるため、舗装部分の拡大が強く望まれており、その地下水道設備の拡充、老朽校舎の建替えなど差し迫つた住民福祉政策の遂行のために必要な財源に乏しく、これが捻出に苦慮していたこと、

(4) 被控訴人市長が、前市長である山本武雄から市長事務の引き継ぎを受けた際、控訴人に対する奨励金の交付につき釧路市として特別の考慮を払うべきであるといつたような何らかの説明もしくは意見が述べられたことは全くなかつたこと、

以上の諸事実が認められ、他に右認定を覆し得る証拠はない。

旧条例の定める奨励金の制度がその制定の当初から経済情勢の推移に即応して改廃せられることが予定されており、釧路市としては、その政策的考慮にもとづき右制度そのものを廃止すると否との自由を持つものであることは前に判断したとおりである。

以上に認定した事実によると、釧路市はその財政事情が相当窮迫した状態にあつたうえ、より緊急を要し、一般住民の福祉に直接関係のある政策を遂行するための財源を確保する公益上の必要からかねて議論のあった工場の増設に対する奨励金の制度を廃止する改正条例を制定施行したものであり、他方旧条例による増設に対する奨励金の制度は、そもそも工場を増設した企業に提供される特殊的利益に過ぎないのであるから、右奨励金の制度が廃止せられることにより企業側の受ける不利益とを比較考量すると、釧路市が右制度を廃止したことは合理的理由にもとづくものといわなければならない。

控訴人が従前の増設について必ず奨励金の交付を受けてきたことは前に認定したとおりであり、かつ改正条例の制定当時に工場増設を完了して奨励金交付申請をしていたとしても、改正条例の制定が合理的理由にもとづくものである以上、改正条例の制定にあたり、右のような控訴人の地位につき全く考慮を払わなかつたことにつき、立法政策上妥当かどうか、または道義上の問題の残ることはかくべつとして、右改正条例が控訴人に対する開係において違法、無効としなければならない程に著しく信義則に反するものと解することはできない。

よつて、控訴人の本主張は、その余の点について判断するまでもなく失当であつて採用することができない。

(五)  控訴人は、改正条例附則第三項において昭和四〇年度を初年度として奨励金交付の対象となるものについては経過措置を設けながら、昭和四一年度に対象となるものについてはこれを欠いているのは法の下の平等の原則に違反する立法であるから、右改正条例に準拠した本件却下処分も違法である、と主張するので判断する。

当審での被控訴人本人尋問の結果によると、昭和四〇年度を初年度として奨励金交付の対象となるのは昭和三九年中に工場の増設を完了して昭和四〇年一月一日現在で固定資産税課税標準が確定し、同年四月以降現実に固定資産税の賦課処分を受け、改正条例が制定された同年一二月の時点には既に納税が進行しているものであり、旧条例第七条の申請書提出期間の制限からいって、遅くとも同年春頃までには奨励金交付申請の内容について事務当局の調査も完了しているものであり、他方昭和四〇年中に増設をしたものは、改正条例制定当時未だこれに対する固定資産税課税標準すら確定されておらず、もとより申請の内容について調査も未だ行なわれていないものであつて、このような事実的差異にもとづき改正条例附則第三項の経過規定が設けられたことが認められ、右認定を左右すべき証拠はない。そうすると、右附則第三項の経過規定をもつて、憲法第一四条に定める人種、信条、性別、社会的身分または門地等により不合理な差別をする立法ということはできないから、控訴人の本主張はその余の点について判断するまでもなく理由がない。

以上の次第で、被控訴人市長が改正条例を適用して工場の増設に対する奨励金制度が廃止されたことを理由に、控訴人の本件奨励金交付申請を却下したことについては、なんらの違法がないから、右却下処分の取消しを求める控訴人の請求は失当として排斥を免れない。

第三結論

よつて、控訴人の本訴請求中、本件改正条例の公布処分の取消しを求める部分を不適法として却下し、本件奨励金交付申請却下処分の取消しを求める部分を失当として棄却した原判決は、その結論において相当であつて、本件控訴は理由がないから民事控訴法第三八四条によりこれを棄却し、訴訟費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(杉山孝 黒川正昭 島田礼介)

別紙一

旧  (改正)釧路市工場誘致条例〈傍線部分は昭四〇・一二・二八条例二七号による改正〉(昭和二九年九月二二日条例第二六号)

改正 昭和三二年六月二四日条例第一九号

昭和三五年三月三〇日条例第一条

昭和三九年七月四日条例第三七号

昭和四〇年三月二五日条例第九号

(目的)

第一条 この条例は、本市に工場を誘致するために、その工場に対して助成を行ない、もつて本市の産業振興に寄与するを目的とする。

(定義)

第二条 この条例で、次の各号に掲げる用語の意義は当該各号の定めるところによる。

(1) 工場 物を製造又は加工をするために作業を行なう施設及び設備をいう。

(2) 工場の新設 本市内にあらたに工場を設置する場合をいう。

(3) 工場の増設 本市内に既存の工場を有するものが、工場の拡充により著しく増産を示し得るものと認められる場合をいう。

(4) 投資額 地方税法(昭和二五年法律第二二五号)第三四一条の規定に基く固定資産で、事業の用に供するものの取得に製した費用額をいう。

(助成)

第三条 本市は、工場の新設又は増設があつた場合、この条例の定めるところにより次の方法で助成を行なうことができる。

(1)  奨励金の交付

〈(1) 工場の新設に対する奨励金の交付〉

(と改正)

(2) 前号の外、工場の新設又は増設についての協力

(奨励金交付の対象)

第四条 奨励金は、本市産業の振興に寄与する事業で、投資額五、〇〇〇万円をこえるものに交付することができる。

(奨励金の額及び交付期間)

第五条 奨励金の額は、その工場(工場の増設の場合はその部分)について、当該年度に課された固定資産税の相当額に、次の各号に掲げる割合を乗じて得た額(工場の増設の場合は次の各号に掲げる割合に一〇〇分の七〇を乗じて得た額)の範囲内とし、その期間は、その工場が操業を開始し固定資産税を課された年度から三年とする。但し、市長が特別の事由があると認めたときは、更に二年を限つて延長することができる。〈傍線部分は改正条例により削除〉

(1) 初年度  一〇〇分の一〇〇

(2) 次年度  一〇〇分の七五

(3) その後の年度 一〇〇分の五〇

2 工場の新設でその投資額が一〇億円以上のものについては前項の規定にかかわらず、議会の議決を経て奨励の方法を定めるものとする。

(交付期間の特例)

第六条 投資額が一〇億円以上の工場については、前条の奨励金を七年以内で毎年度予算の範囲内において交付するものとする。

(助成申請)

第七条 奨励金の交付を受けようとする者は、事業開始の日から三月以内に、協力を受けようとする者は、その都度別に定める申請書を市長に提出しなければならない。

2 前項の申請事項に変更があつたときは、一月以内にその旨を市長に届出なければならない。

(取消)

第八条 この条例の適用を受ける者が、次の各号の一に該当する場合は、協力の取消又に奨励金の一部若しく全部の返還を命ずることがある。

(1) 第四条に定める工場の基準を欠くに至つたとき。

(2) 事業を休廃止したとき又はその状態にあたると認められたとき。

(3) 詐偽又は不正行為によつて助成を受け又は受けようとしたとき。

(4) この条例に定める事項に違反したとき。

(調査、報告)

第九条 市長は、助成を受けた者に対して必要な調査を行ない又は報告を求めることができる。

第一〇条 削除

(委任)

第一一条 この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。

附則

この条例は、昭和二九年四月一日から施行する。

附則(昭和三二年六月二四日条例第一九号)

この条例は、公布の日から施行する。

附則(昭和三五年三月三〇日条例第一号)

1 この条例は、公布の日から施行し、昭和三四年変において交付する奨励金から適用する。

2 この条例施行前に、奨励金の交付の決定をうけたものについては、なお従前の例による。

3 改正前の条例第四条の規定により、昭和三四年度において奨励金の交付の対象になるもののうち、投資額三、〇〇〇万円未満のものについては、なお、従前例による。

附則(昭和三九年七月四日条例第三七号)抄

1 この条例は、公布の日から施行し、昭和三九年四月一日から適用する。

附則(昭和四〇月三月二五日条例第九号)

1 この条例は、公布の日から施行する。

2 この条例施行前に、奨励金の交付の決定をうけたものについては、なお従前の例による。

附則(昭和四〇年一二年二八日条例第二七号)

1 この条例は、公布の日から施行する。

2 この条例施行前に、奨励金の交付の決定をうけたものについては、なお従前の例による。

3 改正前の条例の規定により、昭和四〇年度を初年度として、奨励金の交付の対象となるものについては、なお従前の例による。

4 釧路市中小企業振興条例(昭和三五年釧路市条例第一七号)の一部を次のように改正する。

第三条第一項中「次の各号に掲げる割合を乗じて得た額」を「次の各号に掲げる割合を乗じて得た額(投資額五、〇〇〇万円をこえる工場の創設の場合は、次の各号に掲げる割合に一〇〇分の七〇を乗じて得た額)」に改める。

同条第二項第二号を次のように改める。

(2) 削除

釧路市工場誘致条例施行規則

(昭和三〇年一月一日規則第一号)

改正 昭和三二年七月一六日規則第一六号・昭和三四年九月二九日規則第一九号・昭和三六年九月六日規則第二七号

第一条 この規則は、釧路市工場誘致条例(昭和二九年釧路市条例第二六号。以下「条例」という。)の施行について必要な事項を定めることを目的とする。

第二条 削除

第三条 条例第七条の申請書は、別記様式とする。

第四条 市長は、前条の申請書を受理したときは審査し、適当と認めたときはその工場に対する助成の限度その他必要な条件を付し助成するものとする。

第五条 契励金は、各年度毎にその工場に課された固定資産税を当該年度内に納付した後に交付する。

第六条 市長は、条例第四条の基準に該当するものであつても次の各号の一に該当する場合は助成の対象としない。

(1) 公共団体又は公共企業団体が経営するもの。

(2) 一の工場における新設又は増設が数次にわたり実施せられるとき。但し、その完成が二ケ年以内である場合はこの限りでない。

第七条 助成は、相続及び譲渡その他の事由によリこれを受ける者に変更を生じた場合においてもその事業を継承する者に対し引続いてこれを行なう。但し、市長にその継承の事実を届け出なければならない。

附則

この規則は、公布の日から施行し、条例施行の日から適用する。

附則(昭和三二年七月一六日規則第一六号)

この規則は、公布の日から施行する。

附則(昭和三四年九月二九日規則第一九号)抄

1 この規則は、公布の日から施行する。

附則(昭和三六年九月六日規則第二七号)

この規則は、公布の日から施行し、昭和三六年度分から適用する。

(別記様式)・(別紙)〈省略〉

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